準確定申告の期限4か月の数え方と、申告が必要な人
年の途中で亡くなった方の所得税は、相続人が「準確定申告」で申告します。期限の4か月はいつまでか、そもそも申告が必要か、誰がどこへ出すのかを、所得税法と国税庁の案内にもとづいて整理しました。
この記事の要点
- 準確定申告は、亡くなった方の1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人が申告・納税する手続きです(国税庁 No.2022)。
- 期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内(所得税法124条・125条)。4か月後の同じ日付で、土日祝などに当たれば翌日です(国税通則法10条2項)。
- 必要なのは、亡くなった方が確定申告をしなければならなかった場合。公的年金等が400万円以下で、ほかの所得が20万円以下なら、原則不要です(国税庁 No.1600)。
- 1月1日〜3月15日に亡くなり前年分が未申告なら、前年分も同じ4か月の期限です(所得税法124条)。
- 医療費控除は亡くなった日までに本人が支払った分だけ。亡くなった後に払った入院費は入りません(国税庁 No.2022)。
1. 準確定申告とは
所得税は、1月1日から12月31日までの1年間の所得について、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をするのが原則です。ところが年の途中で亡くなった方は、自分で申告ができません。そこで、亡くなった方の1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人(包括受遺者を含む)が代わりに申告と納税をします。これを準確定申告といいます(国税庁 No.2022)。
居住者が年の中途において死亡した場合において、その者のその年分の所得税について第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人は、(中略)その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日(中略)までに、税務署長に対し、(中略)申告書を提出しなければならない。所得税法125条1項(e-Gov法令検索で2026年10月15日に確認)
条文のとおり、準確定申告が義務になるのは、亡くなった方が生きていれば確定申告をしなければならなかった場合です。申告が必要かどうかは、2章の「必要な人・不要な人」で確認してください。国税庁 No.2022は、この手続きを「申告と納税」を行うものとして案内しています。
2. 申告が必要な人・不要な人
準確定申告が必要かどうかは、亡くなった方のその年の所得の状況で決まります。国税庁が示す確定申告の要否の基準のうち、相続でよく出てくるものを整理しました。
| 亡くなった方の状況 | 準確定申告 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自営業・不動産収入などがあり、確定申告をしていた | 必要になることが多い | 所得税法120条・125条1項 |
| 給与の年間収入金額が2,000万円を超えていた | 必要 | 国税庁 No.1900 |
| 給与を1か所から受けていて、給与・退職所得以外の所得が20万円を超えていた | 必要 | 国税庁 No.1900 |
| 公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下 | 不要(確定申告不要制度) | 国税庁 No.1600 |
| 源泉徴収された税金が多く、申告すれば還付される | 申告できる(任意) | 所得税法125条2項 |
年金だけで暮らしていた方の多くは、公的年金等の確定申告不要制度の対象になります。国税庁 No.1600は、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であれば、確定申告の必要はないとしています。ただし、源泉徴収の対象とされない公的年金等を受け取っていた方は、この制度を使えません(同ページの注)。
確定申告が不要な場合でも、医療費控除などで所得税が戻ってくるときは、還付を受けるための申告をすることができます(所得税法125条2項、国税庁 No.1600)。入院費が多くかかった年などは、還付になるかどうかを確かめる価値があります。また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合があると国税庁は案内しています。
3. 期限4か月の数え方と計算例
期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日」です(所得税法124条・125条)。言い換えると、知った日の4か月後の同じ日付が期限です。初日を入れずに数え(国税通則法10条1項1号)、月は暦に従い、応当する日がない月はその月の末日です(同項2号・3号)。
国税庁 No.2022の例では、12月1日に亡くなった場合の期限は翌年4月1日です。期限の日が日曜日・祝日・土曜日、または12月29日〜31日に当たるときは、その翌日が期限とみなされます(国税通則法10条2項、同法施行令2条2項)。相続放棄の3か月(民法の期間)と違い、税の期限は休日なら一律に延びます。
| 亡くなった日(=知った日) | 4か月後の同じ日 | 実際の期限 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 2025年12月1日 | 2026年4月1日(水) | 2026年4月1日(水) | 国税庁 No.2022の例 |
| 2026年1月6日 | 2026年5月6日(水・振替休日) | 2026年5月7日(木) | 休日なので翌日 |
| 2026年6月20日 | 2026年10月20日(火) | 2026年10月20日(火) | そのまま |
| 2026年8月31日 | 2026年12月31日(木) | 2027年1月4日(月) | 12月31日・元日・土日が続く |
| 2026年10月15日 | 2027年2月15日(月) | 2027年2月15日(月) | 翌年の確定申告期間と重なる |
表の日付は、所得税法・国税通則法の数え方で計算し、相続のこよみの検算テストと同じ計算で確かめたものです。2027年1月2日・3日は土日です。
「4か月=120日」と日数で数えると、月によってずれます。暦の上で4か月後の同じ日付、と覚えておきましょう。亡くなった日を入れれば、休日を反映した期限日を相続の期限カレンダーで確認できます。
4. 1月〜3月15日に亡くなった場合(前年分も)
確定申告をしなければならない方が、前年分の確定申告をしないまま、1月1日から確定申告期限(原則3月15日)までの間に亡くなることがあります。この場合、相続人は前年分の確定申告も、知った日の翌日から4か月以内に行います(所得税法124条1項、国税庁 No.2022)。
第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書を提出すべき居住者がその年の翌年一月一日から当該申告書の提出期限までの間に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その相続人は、(中略)その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日(中略)までに、税務署長に対し、当該申告書を提出しなければならない。所得税法124条1項(e-Gov法令検索で2026年10月15日に確認)
つまり、たとえば2月に亡くなった自営業の方であれば、前年分と、その年の1月1日から亡くなった日までの分の2つの申告が、同じ4か月の期限で必要になることがあります。前年分の書類(帳簿・領収書・源泉徴収票など)を早めに探しておきましょう。
5. 誰が・どこへ・何を出すか
| 項目 | 内容(国税庁 No.2022) |
|---|---|
| 申告する人 | 相続人(包括受遺者を含む) |
| 相続人が2人以上のとき | 原則として連署で提出。他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもでき、その場合は申告内容を他の相続人に通知する |
| 添付する書類 | 各相続人の氏名・住所・被相続人との続柄などを書いた「準確定申告書の付表」 |
| 提出先 | 亡くなった方の死亡当時の納税地を所轄する税務署長 |
| 還付金を代表者が受け取るとき | 「委任状(準確定申告書用)」を提出 |
提出先は、相続人の住所ではなく亡くなった方の死亡当時の納税地の税務署です。相続税の申告書の提出先(亡くなった方の住所地の税務署)と同じになることが多いですが、必ず確認しましょう。e-Taxでの提出についても、国税庁 No.2022のページから案内があります。
「相続人」になるのが誰かは、民法の定めで決まります。誰が相続人で、それぞれの相続分がどれだけかは、法定相続分の計算で確かめられます。
6. 控除の扱い:亡くなった日までが基準
準確定申告では、所得控除の多くが亡くなった日までを基準に判定されます。国税庁 No.2022による主な扱いは次のとおりです。
| 控除 | 準確定申告での扱い |
|---|---|
| 医療費控除 | 亡くなった日までに本人が支払った医療費だけが対象。亡くなった後に相続人が支払った医療費は含められない |
| 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除 | 亡くなった日までに本人が支払った保険料等が対象 |
| 寄附金控除 | 亡くなった日までに本人が支出した特定寄附金が対象 |
| 配偶者控除・扶養控除などの判定 | 親族関係や合計所得金額の見積りなどは、亡くなった日の現況で判定 |
| 配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除などの額 | 月割計算はしない |
入院していた方の場合、亡くなった後に病院へ支払った入院費は、本人の準確定申告の医療費控除には入りません。領収書の日付を確認して、亡くなった日までに支払った分を整理しましょう。
7. ほかの期限とのつながり
準確定申告の4か月は、相続のほかの期限のあいだにあります。亡くなった日に知った場合、次の順に期限が来ます。
- 3か月:相続放棄・限定承認(民法915条1項)。くわしくは相続放棄の期限3か月の数え方。
- 4か月:準確定申告と納税(所得税法124条・125条)。
- 10か月:相続税の申告と納税(相続税法27条)。必要かどうかは相続税の基礎控除で判定します。
相続放棄をするか迷っている段階で準確定申告の期限が近づくこともあります。相続放棄をした人の扱いなど、個別の事情がある場合は、申告先の税務署に確認してください。期限全体の一覧は死亡後の手続き一覧にまとめています。
次の一歩
亡くなった日を入れると、準確定申告(4か月)・相続放棄(3か月)・相続税(10か月)などの期限日を、土日祝の扱いも反映して一覧にします。
期限カレンダーを使う(無料)→無料相続人は誰?準確定申告をする相続人と、それぞれの法定相続分を確かめられます。
開く →よくある質問
準確定申告の期限はいつですか?
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(所得税法124条・125条)。亡くなった日に知った場合は、亡くなった日の4か月後の同じ日付が期限で、その日が土日祝・12月29日〜31日などに当たるときは翌日が期限になります(国税通則法10条2項)。
年金だけで暮らしていた親でも、準確定申告は必要ですか?
公的年金等の収入金額が400万円以下で、年金以外の所得金額が20万円以下であれば、確定申告は不要とされています(国税庁 No.1600)。ただし、医療費控除などで所得税が戻る場合は、還付を受けるための申告ができます。源泉徴収の対象とされない公的年金等を受け取っていた方は、この制度を使えません。
亡くなった後に支払った入院費は、医療費控除に入りますか?
入りません。準確定申告の医療費控除の対象は、亡くなった日までに本人が支払った医療費だけで、亡くなった後に相続人が支払った医療費は含められません(国税庁 No.2022)。
相続人が3人います。全員で1枚を出す必要がありますか?
原則は相続人の連署で提出しますが、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。その場合は、申告した内容を他の相続人に通知します(国税庁 No.2022)。どちらの場合も「準確定申告書の付表」を添付します。
1月に亡くなり、前年分の確定申告もまだでした。どうなりますか?
確定申告をしなければならない方が前年分を申告しないまま1月1日から申告期限までに亡くなった場合、相続人は前年分も、知った日の翌日から4か月以内に申告します(所得税法124条1項、国税庁 No.2022)。
出典(一次情報)
- 所得税法120条・124条・125条(e-Gov法令検索)
- 国税通則法10条(e-Gov法令検索)
- 国税通則法施行令2条(e-Gov法令検索)
- 民法915条(e-Gov法令検索)
- 国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
いずれも2026年10月15日に確認しました。
関連する解説
確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月15日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順