相続人が行方不明のとき⁠|不在者財産管理人

遺産分割協議は、相続人全員でしなければまとまりません。相続人の中に、どこにいるか分からない人がいるときに使える手続きが「不在者財産管理人」です。条文と裁判所の案内にもとづいて、申立ての方法と、遺産分割までの流れを解説します。

この記事の要点

  • 住所や居所を去って戻る見込みのない人(不在者)に財産の管理人がいないとき、家庭裁判所は申立てで財産の管理に必要な処分を命じられます(民法25条)。
  • 選ばれた不在者財産管理人は、家庭裁判所の権限外行為の許可を得て、不在者に代わって遺産分割をします(民法28条、裁判所)。
  • 申立ての費用は収入印紙800円分と郵便切手。財産が少ないと、管理の費用として予納金を求められることがあります。
  • 生死が7年間分からないときは、失踪宣告という別の手続きもあります(民法30条)。

この記事で分かる次の行動:戸籍の附票で居場所を調べ、見つからなければ家庭裁判所に管理人の選任を申し立てる

1. まず居場所を調べる

「連絡先を知らない」だけなら、行方不明とは限りません。戸籍の附票には住所の移り変わりが記録されているため、相続人は戸籍とあわせて附票を取り、今の住所に手紙を出すなどの方法が考えられます。戸籍の集め方は相続で必要な戸籍の集め方で解説しています。

相続税の申告期限(10か月)は、遺産分割がまとまらなくても延びません(相続税の申告期限)。家庭裁判所の手続きには時間がかかるため、期限カレンダーで期限日を先に確かめておきましょう。

2. 不在者財産管理人とは

従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。民法25条1項

裁判所の案内では、選ばれた不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって遺産分割や不動産の売却などを行えるとされています。管理人の権限を超える行為には家庭裁判所の許可が要る、という決まりです(民法28条)。

父被相続人母相続人長男相続人次男行方不明財産管理人家裁が選任
図 行方不明の次男の代わりに、不在者財産管理人が権限外行為の許可を得て協議に加わる(太枠=相続人・協議に加わる人、点線=亡くなった人。氏名は架空の例)

3. 申立ての方法(裁判所の案内)

項目内容
申立人利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者など)、検察官
申立先不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所
費用収入印紙800円分、連絡用の郵便切手(額は裁判所ごとに異なる)。財産の内容から管理費用(管理人の報酬を含む)が不足するおそれがある場合は、予納金を納めることがある
主な書類申立書、不在者の戸籍謄本と戸籍附票、財産管理人候補者の住民票または戸籍附票、不在の事実を証する資料、不在者の財産に関する資料、利害関係を証する資料

4. 遺産分割までの流れ

  1. 家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる
  2. 家庭裁判所が管理人を選ぶ
  3. 管理人が、遺産分割について権限外行為の許可を家庭裁判所に申し立てる
  4. 許可を得た管理人が、不在者に代わって遺産分割協議に加わる

管理人は不在者の財産を守る立場なので、不在者の取り分をどうするかは、家庭裁判所の許可の範囲で決まります。分け方の案を作るときは、財産目録で遺産の全体を整理しておきましょう。

相続のこよみの遺産分割協議書の作成ツールは、行方不明の相続人がいて、不在者財産管理人が協議に加わる場合には対応していません。このような場合は、一般的には専門家への相談が考えられます。

5. 失踪宣告との違い

不在者財産管理人失踪宣告
条件住所や居所を去り、財産の管理人がいない生死が7年間明らかでない(危難に遭った場合は1年。民法30条)
効果管理人が財産を管理し、許可を得て遺産分割などをする死亡したものとみなされる(民法31条)

失踪宣告がされると、その人について相続が始まります。どちらの手続きにするかは事情によって変わるため、弁護士に相談しましょう。

6. 相談先

  • 家庭裁判所:申立ての書式・必要書類。
  • 弁護士:申し立てるかどうか、遺産分割をどう進めるかの判断。
  • 司法書士:申立書など家庭裁判所に出す書類の作成、不動産の相続登記。

次の一歩

よくある質問

行方不明の相続人を除いて遺産分割協議をしてもいいですか?

遺産分割協議は相続人全員で行います。行方不明の相続人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらい、管理人が権限外行為の許可を得て、不在者に代わって遺産分割をする方法があります(裁判所の案内)。

不在者財産管理人の申立てにはいくらかかりますか?

収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。財産の内容から管理費用が不足するおそれがある場合は、予納金を求められることがあります(裁判所の案内)。

誰が申し立てられますか?

利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者など)と検察官です(民法25条1項、裁判所の案内)。

何年行方不明なら死亡したことになりますか?

生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は利害関係人の請求により失踪の宣告をすることができ、7年の期間が満了した時に死亡したものとみなされます(民法30条・31条)。

出典(一次情報)

いずれも2026年10月15日・16日に確認しました。

この記事は、2026年10月16日時点の法令と公式の情報にもとづく一般的な説明で、法律・税務の助言ではありません。個別の事情(相続人の確定、期限の起算点、税額など)によって結論が変わることがあります。具体的な判断は、家庭裁判所・税務署・法務局の窓口、または弁護士・税理士・司法書士にご相談ください。

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確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月16日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順