亡くなった人の借金は相続される?調べ方と選び方

相続では、預貯金や不動産だけでなく、借金などの債務も引き継ぎます。「借金を相続したくない」「誰が払うのか」で迷ったときに、まず押さえておきたい決まりを、条文と裁判所の案内にもとづいて解説します。

この記事の要点

  • 相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぎます。借金などの債務も含まれます(民法896条)。
  • 借金などの金銭債務は、相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分かれるとされます(最高裁昭和34年6月19日判決)。「長男が払う」と決めても、債権者の承諾がなければ債権者には主張できません(民法472条3項)。
  • 借金を引き継がないなら相続放棄、財産の範囲で払うなら限定承認。どちらも知った時から3か月以内に家庭裁判所へ(民法915条)。
  • 放棄や限定承認の前に財産を処分すると、単純承認とみなされることがあります(民法921条1号)。

この記事で分かる次の行動:3か月の期限を確かめ、信用情報機関などで借金を調べてから、承認・放棄・限定承認を選ぶ

1. 借金も相続の対象になる

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。民法896条

「一切の権利義務」には、借入金・カードの利用残高・未払いの税金や医療費などの債務も含まれます。何もしないまま3か月が過ぎると、単純承認(すべて引き継ぐ)をしたものとみなされます(民法921条2号)。

2. 誰がいくら引き継ぐか

各共同相続人は、その相続分に応じて権利義務を引き継ぎます(民法899条)。そして、遺言で相続分が指定された場合でも、債権者は法定相続分に応じて各相続人に請求できるとされています(民法902条の2本文)。

借金のような金銭債務は、相続開始と同時に、法定相続分に応じて当然に分割されると判断されています(最高裁昭和34年6月19日判決・民集13巻6号757頁)。そのため、相続人どうしの取り決めは内部の効力にとどまります。

例(架空)借金600万円の請求のされ方
相続人:配偶者と子2人(法定相続分 2分の1・4分の1・4分の1)債権者は、配偶者に300万円、子に各150万円を請求できる
相続人どうしで「借金は長男が全部払う」と決めた相続人どうしの取り決め(内部の効力)にとどまり、債権者は法定相続分で請求できる。長男だけが負うことにするには、長男とほかの相続人が契約し、債権者が承諾する免責的債務引受(民法472条3項)などが必要

法定相続分は法定相続分の一覧表や法定相続分の計算で確かめられます。

3. 借金の調べ方

3か月の期限の中で判断するために、まず財産と債務を洗い出します。

  • 郵便物・通帳の引き落とし・契約書・カード類を確かめる
  • 信用情報機関に開示を申し込む:CIC・JICC(日本信用情報機構)・全国銀行個人信用情報センターは、法定相続人が亡くなった人の信用情報の開示を申し込める手続きを設けています(JICCは2親等以内の血族も可)。戸籍か法定相続情報一覧図で相続人であることを示します。必要書類と手数料は各機関の案内で確かめてください。
  • 未払いの税金は市区町村、医療費・施設費は病院・施設に確かめる
  • 連帯保証人になっていないか、契約書を確かめる

4. 3か月以内の3つの選び方

選び方借金手続き
単純承認すべて引き継ぐ不要(3か月が過ぎると、こうみなされる)
限定承認相続で得た財産の限度で払う相続人全員で家庭裁判所に申述
相続放棄引き継がない各自が家庭裁判所に申述(必要書類)

3か月以内に調べきれないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます(民法915条1項ただし書、裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。相続放棄をすると、次の順位の人が相続人になることがあります。家族にも早めに知らせましょう。

5. やってはいけないこと

  • 相続財産の処分:預金を引き出して使う、不動産を売るなど、相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号。保存行為などを除く)。
  • 財産を隠す:限定承認や相続放棄の後でも、財産を隠したり使ったりすると、単純承認とみなされることがあります(民法921条3号)。

何が「処分」に当たるかは事情によって判断が分かれることがあります。迷ったら手を付ける前に相談しましょう。

6. 相談先

借金の額が分からない、債権者から請求が来ている、相続放棄で次の順位の人に影響が出る、といった場合は、専門家への相談が考えられるケースです。

  • 弁護士:承認・放棄・限定承認のどれにするかの判断、債権者との交渉。
  • 司法書士:相続放棄の申述書など、家庭裁判所に出す書類の作成。
  • 家庭裁判所:申述の書式・必要書類・期間の伸長の手続き。

次の一歩

よくある質問

親の借金は子が払わなければいけませんか?

相続人になると、借金などの債務も引き継ぎます(民法896条)。引き継がないためには、知った時から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄をする方法があります(民法915条・938条)。

遺産分割協議で借金を払う人を決めれば、ほかの相続人は払わなくてよいですか?

相続人どうしの取り決めは内部の効力にとどまり、それだけでは債権者に主張できません。金銭債務は相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割されるとされ(最高裁昭和34年6月19日判決・民集13巻6号757頁)、長男だけが負うことにするには、長男とほかの相続人が契約して債権者が承諾する免責的債務引受(民法472条3項)などが必要です。

借金があるか分からないまま3か月が過ぎそうです。

家庭裁判所に、相続の承認または放棄の期間の伸長を申し立てることができます(民法915条1項ただし書)。期限が来る前に申し立てる必要があります。

亡くなった人の預金で借金を返してもいいですか?

相続財産の処分に当たると、単純承認をしたものとみなされることがあります(民法921条1号)。相続放棄や限定承認を考えている場合は、手を付ける前に専門家や家庭裁判所に確かめてください。

出典(一次情報)

いずれも2026年10月15日・16日に確認しました。

この記事は、2026年10月16日時点の法令と公式の情報にもとづく一般的な説明で、法律・税務の助言ではありません。個別の事情(相続人の確定、期限の起算点、税額など)によって結論が変わることがあります。具体的な判断は、家庭裁判所・税務署・法務局の窓口、または弁護士・税理士・司法書士にご相談ください。

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確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月16日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順