数次相続とは⁠|分割前に相続人が亡くなったら

父の遺産を分ける話し合いが終わる前に、母も亡くなった。このように、相続が終わらないうちに次の相続が起きることを「数次相続」と呼びます。協議に加わる人や期限の数え方が変わるため、ふつうの相続より注意が必要です。条文と判例にもとづいて解説します。

この記事の要点

  • 亡くなった相続人の相続人が、その人の相続人としての地位を引き継ぎ、最初の相続の遺産分割協議に加わります(民法896条)。
  • 最初の相続の承認・放棄をしないまま相続人が亡くなった場合、3か月はその人の相続人が、自分が地位を引き継いだことを知った時から数えます(民法916条、最高裁令和元年8月9日判決)。
  • 相続税では、亡くなった相続人の申告は、その相続人が知った日の翌日から10か月以内に代わって出します(相続税法27条2項)。10年以内に続いた相続には相次相続控除があります(同法20条)。
  • 協議に加わる人や書類の書き方が変わるため、相続のこよみの協議書ツールは数次相続に対応していません。

この記事で分かる次の行動:相続ごとに財産と期限を分けて整理し、協議に加わる人を確かめる

1. 数次相続と代襲相続の違い

代襲相続数次相続
相続人が亡くなった時期相続開始以前相続開始の後(遺産分割が終わる前)
誰が加わるか亡くなった人の子(直系卑属)だけ(民法887条2項)亡くなった相続人の相続人(配偶者も含む)
仕組み代わりに相続人になる相続人としての地位を、相続で引き継ぐ

代襲相続は代襲相続とはで解説しています。

2. 遺産分割協議に加わる人

相続人は、相続開始の時から被相続人の権利義務を引き継ぎます(民法896条)。最初の相続の相続人としての地位も、その人の相続人に引き継がれます。

例(架空)父の遺産分割協議に加わる人
父が亡くなり、相続人は母・長男・長女。協議の前に母が亡くなった長男・長女(母の相続人として、母の地位も引き継ぐ)
父が亡くなり、相続人は母・長男・長女。協議の前に長男が亡くなった。長男には妻と子が1人母・長女・長男の妻と子(長男の相続人として)
父被相続人母相続人長男協議の前に死亡長男の妻長男の相続人長女相続人長男の子長男の相続人
図 2つ目の例:父の遺産分割協議に加わるのは、母・長女・長男の妻・長男の子(太枠=相続人・協議に加わる人、点線=亡くなった人。氏名は架空の例)

2つ目の例のように、亡くなった相続人の配偶者が加わることがあります。代襲相続とは加わる人が違うので注意しましょう。協議書の書き方(地位を引き継いだことの書き方など)も変わります。

相続のこよみの遺産分割協議書の作成ツールは、数次相続には対応していません。このような場合は、一般的には専門家への相談が考えられます。

3. 相続放棄の3か月の数え方

相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。民法916条

最高裁判所は令和元年8月9日の判決で、この「知った時」を、相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいうと判断しました。

たとえば、疎遠だった親族の借金を、後から知るような場合に関係します。自分の場合の起算日がいつかは、事情によって判断が分かれることがあるため、弁護士・司法書士や家庭裁判所に確かめましょう。

4. 相続税の扱い

  • 亡くなった相続人の申告:最初の相続で申告すべき人が、期限前に申告しないで亡くなった場合、その人の相続人が、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、代わって申告書を出します(相続税法27条2項)。
  • 相次相続控除:2回目の相続の被相続人が、その前10年以内に開始した相続で財産を取得していた場合、一定の額を相続税から控除できる仕組みがあります(相続税法20条)。

税額の計算は事情によって大きく変わります。税理士・税務署に確かめてください。期限は相続税の申告期限で解説しています。

5. 登記と書類の注意

  • 戸籍:それぞれの被相続人について、出生から死亡までの戸籍が必要です(戸籍の集め方)。
  • 相続登記:数次相続があると、申請書の書き方や件数が変わることがあります。法務局の手続案内(予約制)で、申請前に確かめましょう。相続登記の期限(3年)は相続登記の義務化で解説しています。

6. 相談先

数次相続は、相続人の数が増え、書類も複雑になります。協議書や登記の書き方は司法書士、税金は税理士、期限や放棄の判断は弁護士や家庭裁判所に相談するのが考えられます。

次の一歩

よくある質問

数次相続と代襲相続はどう違いますか?

相続開始以前に相続人が亡くなっていれば代襲相続(民法887条2項)、相続開始の後、遺産分割の前に亡くなれば数次相続です。数次相続では、亡くなった相続人の配偶者なども、その人の相続人として協議に加わります。

母が父の相続を放棄しないまま亡くなりました。父の相続を放棄する期限はいつからですか?

民法916条により、母の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。最高裁令和元年8月9日判決は、その時を、母が承認・放棄をしなかった父の相続での相続人の地位を、自分が引き継いだ事実を知った時としています。

数次相続でも遺産分割協議書は1通にできますか?

書き方は事案によって変わります。相続のこよみの協議書ツールは数次相続に対応していません。司法書士などの専門家や、法務局の手続案内で確かめてください。

続けて相続があると相続税は重くなりますか?

10年以内に続いた相続には、相次相続控除という仕組みがあります(相続税法20条)。適用できるか、いくらになるかは税理士や税務署に確かめてください。

出典(一次情報)

いずれも2026年10月15日・16日に確認しました。

この記事は、2026年10月16日時点の法令と公式の情報にもとづく一般的な説明で、法律・税務の助言ではありません。個別の事情(相続人の確定、期限の起算点、税額など)によって結論が変わることがあります。具体的な判断は、家庭裁判所・税務署・法務局の窓口、または弁護士・税理士・司法書士にご相談ください。

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確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月16日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順