相続の財産目録の書き方と無料ひな形(Word・Excel)|不動産・預貯金・株式・借入金の一覧と評価額の調べ方
相続の財産目録は、亡くなった人の財産と借入金などを一覧にしたものです。遺産分割の話し合いの土台になり、相続税がかかるかどうかの見当をつけるのにも役立ちます。家庭裁判所の遺産目録の書式を参考に、書き方と評価額の一般的な調べ方を解説します。合計を自動で計算するExcel版と、Word版のひな形(無料)も用意しました。
この記事の要点
- 財産目録は、遺産を種類・どれか特定できる情報・金額・取得する人の一覧にしたものです。
- 家庭裁判所の遺産分割調停の書式では、遺産目録を土地/建物/現金・預貯金・株式等に分けています。この欄にそろえると漏れにくくなります。
- 評価額は、国税庁の説明では、建物は固定資産税評価額、土地は路線価方式か倍率方式、預貯金は亡くなった日の預入高、上場株式は亡くなった日の終値などが基本です。
- 借入金などの債務も別の欄で一覧にします。相続税の計算では、債務や葬式費用を差し引けます(国税庁No.4126)。
1. 財産目録とは・何に使うか
この記事でいう財産目録は、相続人が遺産の全体を確かめるために作る一覧です。主に次の場面で使います。
- 遺産分割の話し合い:何がどれだけあるかを全員で同じ資料で確かめてから、分け方を決められます。
- 家庭裁判所の遺産分割調停:申立てのときに遺産目録を出します(裁判所の書式)。
- 相続税の見当をつける:遺産の合計が基礎控除額を超えるかどうかの目安になります(相続税の基礎控除)。
民法には、ほかにも「財産目録」が出てきます。自筆証書遺言に添付する目録(パソコンで作れるが、各ページに遺言者の署名・押印が必要。民法968条2項)、遺言執行者が作って相続人に渡す目録(民法1011条)、限定承認で家庭裁判所に出す目録(民法924条)です。これらは決まりのある書類で、この記事の一覧とは別のものです。
2. 決まった形はあるか
相続人どうしで使う一覧なら、書き方は自由です。参考になるのが、裁判所が公開している遺産分割調停の遺産目録の書式で、次の3種類に分かれています。
- 土地:番号・所在・地番・地目・地積・備考
- 建物:番号・所在・家屋番号・種類・構造・床面積・備考
- 現金、預・貯金、株式等:番号・品目・単位・数量(金額)・備考
裁判所の記入例では、不動産は「登記事項証明書の記載のとおり」書くよう案内されています。この記事のひな形は、この区分に「評価額」「確認した書類」「取得する人」の列と、借入金などの欄を加えたものです。
3. 財産の種類ごとの書き方
| 種類 | 書くこと(特定できる情報) | 確認する書類の例 |
|---|---|---|
| 土地 | 所在・地番・地目・地積 | 登記事項証明書、固定資産税の課税明細書 |
| 建物 | 所在・家屋番号・種類・構造・床面積 | 登記事項証明書、課税明細書 |
| 預貯金 | 金融機関・支店・種類・口座番号、亡くなった日の残高 | 通帳、残高証明書 |
| 株式・投資信託 | 証券会社・銘柄・株数(口数) | 取引残高報告書、残高証明書 |
| 現金 | 金額 | ― |
| 自動車など | 車名・登録番号 | 自動車検査証 |
| 借入金・未払金 | 相手先・内容・金額 | 契約書、請求書、通知 |
不動産は、遺産分割協議書と同じく、登記事項証明書のとおりに書いておくと、後で協議書や登記の申請書にそのまま使えます(遺産分割協議書の書き方)。
4. 記載例
住所・金額はすべて架空です。評価額の出し方は6.を参照してください。
| 区分 | 内容 | 評価額 | 確認した書類 | 取得する人 |
|---|---|---|---|---|
| 土地 | 東京都港区○○一丁目 23番 宅地 123.45㎡ | 36,000,000円 | 登記事項証明書・路線価図 | 相続 花子 |
| 建物 | 東京都港区○○一丁目23番地 家屋番号23番 居宅 木造かわらぶき2階建 1階43.00㎡ 2階21.34㎡ | 4,200,000円 | 登記事項証明書・課税明細書 | 相続 花子 |
| 預貯金 | ○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号1234567 | 8,350,000円 | 残高証明書(死亡日) | 相続 一郎 |
| 株式 | ○○証券 ○○株式会社 株式 500株 | 1,250,000円 | 残高証明書・死亡日の終値 | 相続 次郎 |
| 借入金 | ○○カード 未払金 | −180,000円 | 利用明細 | 相続 花子 |
| 合計(財産−借入金) | 49,620,000円 | |||
相続税の申告で使う評価額は、特例の適用などで変わることがあります。申告が必要かどうか・税額は、税務署または税理士に確かめてください。
5. 財産の探し方
- 不動産:毎年届く固定資産税の課税明細書(納税通知書)に、その市区町村にある不動産が載っています。ほかの市区町村の不動産は載らないので、郵便物などから手がかりを探します。所在が分かったら、登記事項証明書を取ります。
- 預貯金:通帳・キャッシュカード・金融機関からの郵便物を確かめます。亡くなった日の残高は、金融機関の残高証明書で確かめられます(裁判所の調停の添付書類の例にも「預貯金通帳の写し又は残高証明書」とあります)。
- 株式・投資信託:証券会社からの取引残高報告書や配当の通知を確かめます。
- 借入金:ローンの契約書、カードの利用明細、督促の通知などを確かめます。借入金が多いときは、相続放棄の期限(原則3か月)にも注意します。
6. 評価額の一般的な調べ方
国税庁が相続税・贈与税の計算について示している、基本的な調べ方です。相続人どうしの話し合いでは、時価(実際に売れる値段)を目安にすることもあります。どの金額を使うかは、相続人全員で決めましょう。
| 財産 | 国税庁が示す基本の考え方 |
|---|---|
| 土地 | 路線価がある地域は路線価方式(路線価を補正率で補正して面積を掛ける)、ない地域は倍率方式(固定資産税評価額×一定の倍率)。路線価図・評価倍率表は国税庁の「財産評価基準書」で見られる(No.4602) |
| 建物 | 固定資産税評価額×1.0(固定資産税評価額と同じ)(No.4602) |
| 預貯金 | 亡くなった日の預入高。定期預金などは、解約した場合の既経過利子(源泉徴収される税額を引く)を加える(財産評価基本通達203) |
| 上場株式 | 亡くなった日の終値。ただし、その月・前月・前々月の毎日の終値の月平均額のうち最も低い額が終値より低ければ、その額(No.4632) |
| 借入金・葬式費用 | 相続税の計算では、亡くなった時に確実にあった債務と、一定の葬式費用を遺産総額から差し引ける(No.4126) |
賃貸している土地・建物、自宅や事業用の宅地の特例(一定の割合を減額する特例)、マンション、取引相場のない株式などは、評価の方法が変わります(国税庁No.4602・No.4638)。こうした財産がある場合は、税務署や税理士に相談しましょう。
7. 作った後の使い方
- 相続人全員で確かめる:漏れや評価の考え方を、話し合いの前にそろえておきます。
- 分け方を協議書に書く:誰が何を取得するかが決まったら、遺産分割協議書に書きます(遺産分割協議書の書き方)。
- 不動産の名義変更:土地・建物を取得した人は、相続登記を申請します。登録免許税は固定資産税の価格(評価額)をもとに計算します(登録免許税の計算)。
次の一歩
土地・建物・預貯金・株式・自動車などを入力欄どおりに入れると、遺産分割協議書と、評価額の合計つきの財産目録を作れます。見本は無料で最後まで作って確かめられ、保存は7,980円プラン(買い切り・自動更新なし。保存後1年間は修正できます)。
見本を作る(無料)→無料財産目録のひな形(Excel・Word)Excel版は評価額の合計と差し引きを自動で計算。Word版は書き方の解説から。
ダウンロード →よくある質問
財産目録に決まった書式はありますか?
相続人どうしで使う一覧なら、書き方は自由です。家庭裁判所の遺産分割調停の書式では、遺産目録を土地・建物・現金・預貯金・株式等の3種類に分けており、参考になります。自筆証書遺言に添付する目録(民法968条2項)など、決まりのある目録とは別のものです。
預貯金は、いつの時点の残高を書きますか?
国税庁の財産評価基本通達203では、預貯金は課税時期(相続では亡くなった日)の預入高をもとに評価します。金融機関で亡くなった日の残高証明書を取ると確かめられます。
土地の評価額は、固定資産税評価額でいいですか?
国税庁の説明では、相続税の計算での土地は、路線価がある地域は路線価方式、ない地域は固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける倍率方式で評価します(No.4602)。相続登記の登録免許税は、固定資産課税台帳の価格(評価額)をもとに計算します。目的によって使う金額が違います。
借金も財産目録に書きますか?
書いておくと、遺産の全体が分かります。相続税の計算では、亡くなった時に確実にあった債務や一定の葬式費用を遺産総額から差し引けます(国税庁No.4126)。借入金が多い場合は、相続放棄の期限(原則3か月)にも注意しましょう。
財産目録は相続人全員の署名が必要ですか?
相続人どうしで使う一覧に、署名の決まりはありません。分け方の合意は、遺産分割協議書に相続人全員が署名・押印して残します。
出典(一次情報)
- 裁判所:遺産分割調停の申立書(土地・建物・現金預貯金株式等の遺産目録の書式・記入例)
- 国税庁:No.4602 土地家屋の評価
- 国税庁:No.4632 上場株式の評価
- 国税庁:No.4638 取引相場のない株式の評価
- 国税庁:財産評価基本通達203(預貯金の評価)
- 国税庁:No.4126 相続財産から控除できる債務
- 民法924条・968条・1011条(e-Gov法令検索)
いずれも2026年10月15日・16日に確認しました。
関連する解説
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確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月16日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順