相続で必要な戸籍の集め方|広域交付・法定相続情報一覧図

相続の手続きは、戸籍集めから始まります。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をどう集めるか、2024年に始まった広域交付で何ができるか、集めた戸籍の束を何度も出さずに済む法定相続情報一覧図の使い方を整理しました。

この記事の要点

  • 相続人を確定するため、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の現在の戸籍を集めます。
  • 本人・配偶者・直系の親族は、2024年3月1日から本籍地以外の窓口でも戸籍を請求できます(広域交付・戸籍法120条の2)。
  • 広域交付は窓口のみ。郵送・代理人は不可で、顔写真付きの身分証が必要です。兄弟姉妹の戸籍や戸籍の附票は対象外です。
  • 手数料は市区町村の条例で決まります(横浜市の例:戸籍450円、除籍・改製原戸籍750円)。
  • 法定相続情報一覧図の写しは無料で必要な通数を交付され、相続登記・預金・相続税・年金などで戸籍の束の代わりに使えます。

1. なぜ「出生から死亡まで」の戸籍が必要か

相続の手続きでは、まず相続人が誰かを戸籍で確定する必要があります。亡くなった方に、家族が知らない子(前の結婚の子や認知した子など)がいないかを確かめるため、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍を集めます。

法務局の案内によると、戸籍は、結婚による分籍や転籍、戸籍のコンピュータ化などの改製によって、複数の種類にわたることがあります。生まれたときの戸籍から順に、除籍謄本・改製原戸籍謄本・現在の戸籍謄本と、何通にも分かれているのが普通です。市区町村で請求するときは、「相続手続に必要なので、出生から亡くなるまでの連続した戸除籍謄本がほしい」と伝えるよう案内されています。

書類どんなものか
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)現在の戸籍に記載されている全員の証明。コンピュータ化された戸籍では「全部事項証明書」
除籍謄本全員が死亡・婚姻などで除かれ、閉じられた戸籍の証明
改製原戸籍謄本法令による作り替え(改製)の前の古い戸籍の証明
戸籍の附票その戸籍にいる間の住所の移り変わりの記録

相続人の側も、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要になります。法定相続情報証明制度の案内では、被相続人が死亡した日以後の証明日のものが必要とされています。

2. 戸籍を請求できる人

戸籍謄本などを請求できる人は、戸籍法10条1項で定められています。

戸籍に記載されている者(中略)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。戸籍法10条1項(e-Gov法令検索で2026年10月15日に確認)

つまり、本人・配偶者・父母や祖父母(直系尊属)・子や孫(直系卑属)は、理由を書かずに請求できます。亡くなった親の戸籍を子が請求する、亡くなった夫の戸籍を妻が請求する、といった場合です。

兄弟姉妹やおい・めいは、この「直系」に含まれません。これらの方は、自己の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合など、戸籍法10条の2第1項に定める場合に限り、理由を明らかにして請求することになります。兄弟姉妹が相続人になる場合は、請求の方法を役所に確認しましょう。

3. 広域交付:近くの役所でまとめて請求できる

2024年(令和6年)3月1日に施行された改正戸籍法により、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました。これを広域交付といいます(戸籍法120条の2)。本籍が全国各地に分かれている場合でも、住所地や勤務先の近くの窓口でまとめて請求できます(法務省)。

項目内容(法務省の案内)
請求できる人本人、配偶者、直系尊属(父母・祖父母など)、直系卑属(子・孫など)
請求できる証明書戸籍証明書・除籍証明書(コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍を除く)
請求できないもの一部事項証明書、個人事項証明書(いわゆる抄本)
請求の方法市区町村の戸籍担当窓口に、請求する本人が出向く。郵送や代理人による請求はできない
本人確認顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)の提示が必要

自治体の案内(横浜市の例)では、戸籍の附票は広域交付の対象外で、本籍地に請求する必要があるとされています。また、本籍地への確認が必要なため、その日のうちに受け取れないことがあるとも案内されています。時間に余裕をもって窓口に行きましょう。

広域交付は、委任状による代理人や、後見人などの法定代理人も使えません(横浜市の案内)。兄弟姉妹の戸籍も、請求できる人に当たらないため広域交付では取れません。

4. 郵送で請求する方法と手数料

戸籍法10条3項は、請求する人が郵便その他の法務省令で定める方法で戸籍謄本等の送付を求められると定めています。本籍地が遠方で窓口に行けない場合や、広域交付の対象外の書類(戸籍の附票、コンピュータ化されていない戸籍など)は、本籍地の市区町村に郵送で請求します。申請書の様式・本人確認書類の写し・手数料の納め方は自治体ごとに決まっているので、本籍地のウェブサイトで確認してください。

手数料は、交付する市区町村の条例で定められています。横浜市の例では、戸籍全部事項証明書が1通450円、除籍全部事項証明書・除籍謄本・改製原戸籍謄本が1通750円です。出生から死亡までの戸籍が何通にも分かれていると、その通数分の手数料がかかります。

5. 法定相続情報一覧図:戸籍の束の代わりになる

集めた戸籍の束は、相続登記・銀行・証券会社・年金などの手続きのたびに提出を求められます。そのたびに返してもらうのを待つと、時間がかかります。そこで使えるのが、法務局の法定相続情報証明制度です。

戸籍の束と、相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を法務局(登記所)に出すと、登記官が内容を確認し、認証文つきの一覧図の写しを交付してくれます。法務局の案内では、相続登記の申請、被相続人名義の預金の払戻し、相続税の申告、年金等の手続などに使えるとされています。

必ず用意する書類(法務局の案内)

書類取得先
① 被相続人の戸除籍謄本(出生から亡くなるまでの連続したもの)被相続人の本籍地の市区町村
② 被相続人の住民票の除票(取れないときは戸籍の附票)被相続人の最後の住所地の市区町村
③ 相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本(被相続人が死亡した日以後の証明日のもの)各相続人の本籍地の市区町村
④ 申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(運転免許証の表裏のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写しなど)―

一覧図に相続人の住所を記載する場合は各相続人の住民票の写しが、代理人が申出をする場合は委任状などが必要です。兄弟姉妹が相続人になるときなどは、被相続人の親の戸除籍謄本なども必要になることがあります。

制度のポイント

  • 申出先:被相続人の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所。郵送でも申出できます(返信用の封筒と切手を同封)。
  • 手数料は無料。一覧図の写しは、相続手続に必要な通数を交付してもらえます(戸籍の取得費や郵送料は別)。
  • 5年間保管され、その間は写しの再交付を受けられます。
  • 提出した戸籍謄本などは、一覧図の写しの交付のときに返却されます。
  • 代理人に頼めるのは、申出人の親族のほか、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士です。
  • 相続放棄をした相続人がいる場合も、一覧図にはその人の氏名・生年月日・続柄を記載します。
  • 続柄を「子」「配偶者」と書くこともできますが、その場合は相続税の申告などに使えないことがあります。
  • 2024年4月1日から、不動産登記の申請書に法定相続情報番号を書けば、一覧図の写しの添付を省略できます。

6. 相続関係説明図との違い

似た書類に相続関係説明図があります。法務局の相続登記の記載例で示されている図で、被相続人と相続人の関係を図にしたものです。相続登記の申請で、提出した戸籍謄本などを返してもらうときに使えます。

項目法定相続情報一覧図の写し相続関係説明図
作る人相続人が作成し、登記官が確認して写しを交付相続人が作成
証明力登記官の認証文つき相続人が作成した図
使える場面相続登記、預金の払戻し、相続税の申告、年金等の手続など(使えるかは提出先に確認)主に相続登記(戸籍謄本などの原本を返してもらうとき)
遺産分割の記載法定相続人の一覧(分割の内容は書かない)法務局の記載例では、取得しない相続人に「(分割)」と記載

相続関係説明図は、相続のこよみの遺産分割協議書の作成で、協議書とあわせて作ることもできます。

次の一歩

よくある質問

本籍地が遠いのですが、近くの役所で戸籍を取れますか?

2024年3月1日から、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属であれば、本籍地以外の市区町村の窓口で戸籍証明書・除籍証明書を請求できます(広域交付)。窓口に本人が出向き、顔写真付きの身分証明書を提示する必要があり、郵送や代理人による請求はできません(法務省)。

兄弟姉妹の戸籍も、広域交付で取れますか?

取れません。広域交付で請求できるのは、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られます(法務省)。兄弟姉妹の戸籍は、戸籍法10条の2に定める場合に理由を明らかにして、本籍地の市区町村に請求することになります。

法定相続情報一覧図の写しは、費用がかかりますか?

制度の利用は無料で、写しは相続手続に必要な通数を交付してもらえます。ただし、戸籍謄本などの取得手数料や、郵送で申出・受取りをする場合の郵送料は別にかかります(法務局の案内)。

一覧図の写しがあれば、戸籍の束はもう出さなくていいですか?

相続登記、預金の払戻し、相続税の申告、年金等の手続などで戸籍の束の代わりに使えますが、必要な書類は提出先ごとに異なります。一覧図の写し以外に必要な書類は、提出先の機関に確認するよう案内されています(法務局)。

一覧図の写しが後から足りなくなったら?

法定相続情報一覧図は登記所で5年間保管され、その間は写しの再交付を受けられます(法務局の案内)。

出典(一次情報)

いずれも2026年10月15日に確認しました。

この記事は、2026年10月15日時点の法令と公式の情報にもとづく一般的な説明で、法律・税務の助言ではありません。個別の事情(相続人の確定、期限の起算点、税額など)によって結論が変わることがあります。具体的な判断は、家庭裁判所・税務署・法務局の窓口、または弁護士・税理士・司法書士にご相談ください。

関連する解説

確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月15日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順