相続登記の申請書の書き方と記載例|令和8年10月5日以降の新様式(遺産分割)
遺産分割で不動産を取得した人が、法務局に名義変更(相続登記)を申請するときの申請書の書き方です。令和8年10月5日以降に申請する場合の法務局の様式・記載例にもとづき、項目ごとに「何を書くか・どの書類を見て書くか」を解説します。
この記事の要点
- 申請書は、法務局の記載例の項目を上から順に、登記事項証明書・住民票・戸籍のとおりに写して書きます。
- 令和8年10月5日以降の記載例では、申請する相続人ごとに氏名ふりがな・生年月日・国籍等・メールアドレスの欄があります(記載例の注4)。
- 「原因」の日付は、協議がまとまった日ではなく亡くなった日(戸籍上の死亡日)です(注1)。
- 申請書の押印は認印で可(注4)。遺産分割協議書には実印を押し、印鑑証明書を添付します(注15)。
1. 先に結論:何を見て書くか
申請書の項目は決まっていて、それぞれ「写すもと」になる書類があります。手元にそろえてから書き始めると、書き間違いを減らせます。
| 項目 | 書くこと | 見る書類 |
|---|---|---|
| 登記の目的 | 所有権移転 | ―(記載例のとおり) |
| 原因 | (亡くなった日)相続 | 戸籍(除籍)の証明書の死亡日 |
| 相続人 | 被相続人の氏名、取得する人の住所・氏名、ふりがな・生年月日・国籍等・メールアドレス | 住民票の写し、戸籍 |
| 添付情報 | 登記原因証明情報・住所証明情報・国籍等を証する情報 | ―(様式のとおり) |
| 課税価格・登録免許税 | 不動産の価額の合計と税額 | 固定資産税の課税明細書(または評価証明書)の「価格」「評価額」 |
| 不動産の表示 | 土地:所在・地番・地目・地積/建物:所在・家屋番号・種類・構造・床面積 | 登記事項証明書 |
2. 令和8年10月5日以降の様式で加わった欄
法務局は、令和8年10月5日以降に申請する場合の様式と記載例を、それまでのものとは別に公開しています。様式のページには「10月5日以降は、登記名義人となる方の国籍等を申し出ていただくことになります」と書かれています。
記載例では、申請する相続人の氏名の下に、次の4つの欄を持つ表があります(注4)。
- 氏名ふりがな:外国の方は、氏名にローマ字を括弧書きで併記し、ふりがなの記載は不要とされています。
- 生年月日
- 国籍等:記載例では「日本」。
- メールアドレス:本人だけが使っているものを書くよう求められています。
記載例の注4によると、令和8年4月から氏名・住所の変更登記が義務化されたことに伴い、登記所は定期的に住基ネットを検索し、氏名・住所の変更を把握した場合は、登記名義人のメールアドレスあてに連絡して本人の了解を得たうえで、職権で変更登記をします(海外居住者を除く)。メールアドレスの登録は登記の後に行われ、登録後に手続完了のメールが送られるとされています。
あわせて、添付情報の欄に「国籍を証する情報」(様式では「国籍等を証する情報」)が加わっています。日本国籍の方は、相続人であることが分かる戸籍の証明書で足り、重ねて出す必要はないとされています(注8)。
3. 記載例(全体)
妻と子2人で遺産分割協議をし、子の1人(相続 一郎)が土地と建物を取得した場合の例です。法務局の記載例の形にそろえ、住所・氏名・番号はすべて架空のものに置き換えています。
→ 記載例は横にスクロールできます
住民票コードは任意です(書いた場合は住民票の写しを省略できます。注3)。課税価格は、課税明細書の評価額の合計が2,000万円の例です(法務局の記載例と同じ金額)。
4. 項目ごとの書き方
原因
「令和○年○月○日相続」と書きます。日付は、遺産分割協議が成立した日ではなく、被相続人が亡くなった日(戸籍上の死亡日)です(注1)。
相続人
- 括弧書きで被相続人(亡くなった人)の氏名を書きます(注2)。
- 続けて、不動産を取得する相続人の住所・氏名を住民票の写しのとおりに書き、氏名の後に押印します。印は認印で可です(注4)。
- 2人以上で共有にする場合は、法務局の免税用の記載例のように「持分2分の1 相続 花子」と、氏名の前に持分を書きます。
- 連絡先の電話番号は、申請書に直すところがあったときに登記所から連絡を受けられる、平日の日中につながる番号です。携帯電話でもかまいません(注5)。
登記識別情報の通知
登記が終わると、新しい名義人に「登記識別情報」(いわゆる権利証にあたる情報)が通知されます。通知を希望しない場合だけ□にチェックします(注9)。
申請日と申請先
法務局に出す日と、申請先の法務局(支局・出張所)の名前を書きます。申請先は、不動産の所在地を管轄する登記所です(不動産登記法6条)。管轄は法務局の「管轄のご案内」で調べられます。
課税価格・登録免許税
課税価格は、固定資産課税台帳の価格(課税明細書の「価格」「評価額」。「課税標準額」ではない)の合計から1,000円未満を切り捨てた額、登録免許税はその1000分の4(100円未満切捨て)です(注10・注11、法務局「登録免許税の計算」)。免税の措置を受ける場合は、税額の代わりに根拠の条項を書きます。くわしい計算と免税の書き方は相続登記の登録免許税の計算で解説しています。
不動産の表示
登記事項証明書に記録されているとおりに書きます(注12)。住所(住居表示)と地番は違うことが多いので、固定資産税の通知書ではなく登記事項証明書で確かめます。不動産番号を書いた場合は、所在・地番などの記載を省略できます(注13)。
5. 添付する書類
| 添付情報 | 主な書類(記載例の注) |
|---|---|
| 登記原因証明情報 | 遺産分割協議書/被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍の証明書/相続人全員の戸籍の証明書(死亡日以後の証明日のもの)/協議書に押した実印の印鑑証明書(注6・注15) |
| 住所証明情報 | 不動産を取得する相続人の住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)。住民票コードを書いた場合は不要(注3・注7) |
| 国籍等を証する情報 | 日本国籍の方は、相続人であることが分かる戸籍の証明書で足りる(注8) |
- 印鑑証明書の期限:作成後3か月以内のものでなくても差し支えないとされています(注6・注15)。法務局の「申請手続のご案内(遺産分割協議編)」では、登記の申請人になる相続人の分は除く、とされています。
- 法定相続情報一覧図:一覧図の写しを出すか、法定相続情報番号を申請書に書くと、戸籍の証明書の添付に代えられます(注6)。
- 登記上の住所が違う場合:被相続人の最後の住所・氏名が登記記録と違うときは、つながりが分かる住民票の除票や戸籍の附票の写しなどが必要です(注6)。
- 戸籍の原本を返してもらう:相続関係説明図を出すと、戸籍の証明書の原本を返してもらえます。遺産分割協議書は、別にその謄本(写し)を出す必要があります(注6・注16)。
戸籍の集め方は相続で必要な戸籍の集め方、協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方と記載例で解説しています。
6. 提出のしかた
- 用紙:A4の丈夫な紙に、片面で印刷します(法務局「申請手続のご案内(遺産分割協議編)」)。
- 登録免許税の納め方:収入印紙を貼った用紙(割印・消印はしない)か、現金で納めた領収証書を貼った用紙を、申請書と一緒につづります(注11)。
- 契印:申請書が複数枚になるときは、つづり目に契印をします。申請人が2人以上でも、そのうち1人の契印でかまいません(注14)。
- 出し方:法務局の窓口に持参するほか、郵送や、登記・供託オンライン申請システムによる方法があります(同ご案内)。
7. 記載が変わる主な場合
遺産分割ではない相続の場合:法定相続分どおりに相続人全員で取得する場合(相続・法定相続)、公正証書遺言・自筆証書遺言による場合、数次相続の場合は、法務局がそれぞれ別の様式・記載例(令和8年10月5日以降の版を含む)を公開しています。添付書類や書き方が変わるので、法務局「不動産登記の申請書様式について」から、当てはまる記載例を使いましょう。
次のような場合は、この記事の記載例どおりにはならず、書き方や添付書類が変わります。申請先の法務局の窓口相談(予約制)などで確かめましょう。
- 被相続人の登記上の住所・氏名が、最後の住所・氏名と違う
- 相続登記をしないうちに、次の相続が起きている(数次相続)
- 相続人に未成年者や、判断能力に不安のある人がいる
- 代理人が申請する(委任状と、申請書への代理人の記載が必要。注18)
- 相続人が海外に住んでいる・外国籍である(国内の連絡先の記載など。注3・注4)
- 被相続人が不動産の持分だけを持っていた/固定資産課税台帳に価格がない
次の一歩
協議書に入れた内容から、法務局の記載例(令和8年10月5日以降)の項目と順序で申請書を作ります。登録免許税の計算つき。見本は無料で最後まで作って確かめられ、保存は9,800円プラン(買い切り・自動更新なし。保存後1年間は修正できます)。
見本を作る(無料)→無料遺産分割協議書のひな形(Word)法務局の記載例の形。不動産と預貯金の欄つき。
ダウンロード →よくある質問
申請書に押す印鑑は実印ですか?
申請書は認印で差し支えないとされています(法務局記載例の注4)。一方、添付する遺産分割協議書には、印鑑証明書と同じ印(実印)を押し、印鑑証明書を添付します(注15)。
令和8年10月5日より前の様式で申請してもいいですか?
法務局は、令和8年10月5日以降に申請する場合の様式と記載例を別に公開しており、10月5日以降は登記名義人となる方の国籍等を申し出ることになると案内しています。申請日に合った様式を、法務局の「不動産登記の申請書様式について」のページで確かめてください。
メールアドレスは家族のものでもいいですか?
記載例の注4では、メールアドレスは本人だけが使っているものを書くよう求められています。登記所が氏名・住所の変更を把握したときの連絡などに使われます。
「原因」の日付は、遺産分割協議の日ですか?
協議が成立した日ではなく、被相続人が亡くなった日(戸籍上の死亡日)を書きます(記載例の注1)。
申請書はどこに出しますか?
不動産の所在地を管轄する登記所(法務局・支局・出張所)です(不動産登記法6条)。窓口への持参のほか、郵送やオンラインでも申請できます。
出典(一次情報)
- 法務局:不動産登記の申請書様式について(R8.10.5以降に申請する場合の様式・記載例)
- 法務局:所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)記載例(R8.10.5以降に申請する場合・PDF)
- 法務局:所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)様式(R8.10.5以降・PDF)
- 法務局:登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編・PDF)
- 法務局:登録免許税の計算(PDF)
- 法務局:相続登記の登録免許税の免税措置について(免税用の記載例)
- 不動産登記法6条(e-Gov法令検索)
いずれも2026年10月15日・16日に確認しました。
関連する解説
確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月16日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順