相続放棄の必要書類と費用|順位別の戸籍一覧

相続放棄は、家庭裁判所に申述書と戸籍などの書類を出して行います。必要な書類は、放棄する人が配偶者・子・父母・兄弟姉妹のどれかで変わります。裁判所の案内にもとづいて、費用と書類を順位別に整理しました。

この記事の要点

  • 相続放棄は家庭裁判所への申述で行います(民法938条)。申述先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。
  • 費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手(額は裁判所ごとに異なる)です。
  • 全員に共通の書類は、申述書・被相続人の住民票除票(または戸籍附票)・申述人の戸籍謄本です。
  • 父母・兄弟姉妹が放棄するときは、被相続人の出生から死亡までの戸籍など、追加の戸籍が必要です。
  • 期限内にそろわない戸籍は後から追加提出できると案内されています。期限(3か月)を優先しましょう。

1. 相続放棄は家庭裁判所への「申述」

相続放棄は、家族の話し合いや、遺産分割協議で何も受け取らないことにするだけでは成立しません。民法938条により、家庭裁判所に申述(申し出ること)が必要です。

相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。民法938条(e-Gov法令検索で2026年10月15日に確認)

申述が受理されると、放棄した人は初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。借金を含めて何も引き継がない代わりに、預貯金や不動産などのプラスの財産も受け取れません。

この記事では、裁判所の「相続の放棄の申述」の案内にもとづいて、申述に必要な書類と費用を整理します。期限(3か月)の数え方は相続放棄の期限3か月の数え方で解説しています。

2. 申述人・申述先・期間

項目内容(裁判所の案内)
申述人相続人本人。未成年者・成年被後見人の場合は法定代理人が代理する。未成年者と法定代理人がともに相続人である場合など、特別代理人の選任が必要になることがある
申述先被相続人(亡くなった方)の最後の住所地の家庭裁判所
申述期間自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条1項)

申述先は、申述する人の住所ではなく、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。提出先の裁判所は、裁判所ウェブサイトの「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」で調べられます。遠方の場合の提出方法も含め、申述先の裁判所に確認しましょう。

3. 費用:収入印紙800円と郵便切手

費用金額備考
収入印紙800円分(申述人1人につき)申述書に貼る
連絡用の郵便切手裁判所ごとに異なる申述先の家庭裁判所で確認。保管金として電子納付することもできる
戸籍謄本などの取得費市区町村の手数料例:横浜市は戸籍全部事項証明書450円、除籍・改製原戸籍の謄本750円

裁判所に納める費用は、申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です(裁判所の案内)。きょうだい3人がそれぞれ放棄するなら、印紙は3人分が必要です。

実際には、戸籍謄本などを集める費用のほうがかかることがあります。戸籍の証明書の手数料は市区町村の条例で決まっているので、請求する役所で確認してください(上の金額は横浜市の案内による例です)。このサイトでは、弁護士・司法書士などに依頼した場合の報酬額は扱いません。

4. 全員に共通する書類

裁判所の案内では、標準的な申立添付書類として、まず全員に次の書類が求められています。

  • 相続放棄の申述書(裁判所ウェブサイトに書式と記載例があります)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人(放棄する方)の戸籍謄本

このほかに、申述する人がどの順位の相続人かによって、追加の戸籍が必要です。相続人の順位は、①子(亡くなっていれば孫などの代襲者)、②直系尊属(父母・祖父母)、③兄弟姉妹(亡くなっていればおい・めい)で、配偶者は常に相続人です(民法887条・889条・890条)。

5. 順位別に追加で必要な書類

申述する人共通書類に加えて必要な主な戸籍(裁判所の案内)
配偶者被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
子(第1順位)被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
孫・ひ孫など(子の代襲者)上に加えて、被代襲者(本来の相続人だった子など)の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
父母・祖父母(第2順位)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本/子やその代襲者で死亡している人がいれば、その人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本/被相続人の直系尊属に死亡している人(相続人より下の代の人)がいれば、その死亡の記載のある戸籍謄本
兄弟姉妹(第3順位)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本/子やその代襲者で死亡している人がいれば、その人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本/被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
おい・めい(兄弟姉妹の代襲者)兄弟姉妹の場合の書類に加えて、被代襲者(本来の相続人だった兄弟姉妹)の死亡の記載のある戸籍謄本

裁判所の案内を要約したものです。正確な一覧と最新の書式は、裁判所「相続の放棄の申述」のページで確認してください。

順位が下がるほど、必要な戸籍が増えます。父母や兄弟姉妹が放棄する場合は、先の順位の相続人がいない(または全員が放棄した・亡くなっている)ことを戸籍で示す必要があるためです。たとえば兄弟姉妹が放棄するときは、亡くなった方に子がいないこと、父母や祖父母がすでに亡くなっていることを、戸籍で確認できるようにします。

ただし裁判所の案内では、先の順位の相続人が提出済みの書類は不要とされています。たとえば子が全員放棄した後に父母が放棄する場合、子の申述で出した戸籍は、同じ家庭裁判所に出し直す必要はありません。

6. 書類集めで知っておきたいこと

  • 同じ書類は1通で足ります。同じ被相続人について、先に期間伸長の申立てや相続放棄の申述がされている場合、すでに提出された書類は不要です(裁判所の案内)。
  • 期限内に取れない戸籍は、後から追加提出できます。申述前に入手できない戸籍がある場合は、申述後に追加で提出することもできると案内されています。3か月の期限が近いときは、まず申述をしましょう。
  • 法定相続情報一覧図の写しが使える場合があります。戸籍等の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を使えるかどうかは、申述先の家庭裁判所に確認するよう案内されています。
  • 追加の書類を求められることがあります。審理のために必要な場合です。
  • 戸籍は近くの役所でまとめて取れることがあります。2024年3月1日から、本人・配偶者・直系の親族は、本籍地以外の市区町村の窓口で戸籍証明書を請求できます(広域交付)。兄弟姉妹の戸籍は対象外です。くわしくは相続で必要な戸籍の集め方で解説しています。

7. 申述の前に気をつけること

財産を処分すると、放棄できなくなるおそれ

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号。保存行為などは除く)。放棄を考えているときは、亡くなった方の預金を引き出して使う、不動産や車を売るといった行為は、判断がつくまで控えましょう。遺産分割前の預貯金の払戻し制度については亡くなった人の預貯金の払戻しで解説しています。

放棄は撤回できない

相続の承認や放棄は、3か月の期間内でも撤回できません(民法919条1項)。書類を出す前に、財産と借金の状況をできる範囲で確かめましょう。3か月で判断できないときは、期限内に期間の伸長を申し立てられます(民法915条1項ただし書)。

次の順位の人が相続人になる

子が全員放棄すると父母へ、父母もいなければ兄弟姉妹へと、相続人が移ります(民法889条1項・939条)。放棄した人の子が代わりに相続すること(代襲相続)はありません(民法887条2項)。誰が相続人になるかは法定相続分の計算で確かめられます。

次の一歩

よくある質問

相続放棄の申述にかかる費用はいくらですか?

家庭裁判所に納める費用は、申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。郵便切手の額は裁判所ごとに異なります(裁判所の案内)。このほか、戸籍謄本などの取得に市区町村の手数料がかかります。

3か月以内に戸籍がそろいません。どうすればいいですか?

裁判所の案内では、申述前に入手できない戸籍等がある場合は、申述後に追加提出することもできるとされています。期限が近いときは、そろっている書類で期限内に申述し、残りは申述先の家庭裁判所に相談しながら追加しましょう。

兄弟姉妹が相続放棄するときは、どんな書類が必要ですか?

共通書類(申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本)に加えて、被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、死亡している子やその代襲者がいればその人の戸籍謄本、被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本などが必要です。先の順位の人が提出済みの書類は不要です(裁判所の案内)。

法定相続情報一覧図の写しは使えますか?

裁判所の案内では、戸籍等の代わりに法定相続情報一覧図の写しを使える場合があるとされ、詳しくは申述先の家庭裁判所に確認するよう案内されています。

きょうだい3人で放棄する場合、印紙は1人分でいいですか?

収入印紙800円分は申述人1人につき必要なので、3人なら3人分です。ただし、同じ書類は1通で足り、先に提出された書類は不要とされています(裁判所の案内)。

出典(一次情報)

いずれも2026年10月15日に確認しました。

この記事は、2026年10月15日時点の法令と公式の情報にもとづく一般的な説明で、法律・税務の助言ではありません。個別の事情(相続人の確定、期限の起算点、税額など)によって結論が変わることがあります。具体的な判断は、家庭裁判所・税務署・法務局の窓口、または弁護士・税理士・司法書士にご相談ください。

関連する解説

確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月15日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順