遺産分割協議書の書き方と記載例|不動産・預貯金・代償分割・実印と印鑑証明
遺産分割協議書は、相続人全員で話し合って決めた遺産の分け方を書面にしたものです。相続登記や預貯金の手続きで提出を求められます。法務局が公開している記載例にもとづき、項目ごとの書き方を記載例つきで解説します。
この記事の要点
- 遺産分割の協議は相続人全員で行います(民法907条1項)。1人でも欠けた協議書は使えません。
- 冒頭に亡くなった日・最後の住所・氏名と、相続人全員で協議したことを書きます。日付は協議の日ではなく死亡日です(法務局記載例の注1)。
- 不動産は登記記録(登記事項証明書)のとおり、預貯金は金融機関・支店・種類・口座番号で特定します。
- 相続人全員が署名し、印鑑証明書と同じ印(実印)を押して、印鑑証明書を各1通添付します(記載例の注15)。
1. 遺産分割協議書とは・いつ必要か
共同相続人は、遺言で禁じられている場合などを除き、いつでも、その協議で遺産の全部または一部を分割できます(民法907条1項)。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に分割を請求できます(同条2項)。遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼって効力を生じます(民法909条)。
民法には協議を書面にしなければならないという定めはありませんが、実際の手続きでは書面が必要になる場面が多くあります。
- 相続登記:遺産分割で不動産を取得した場合、法務局の記載例では、登記原因証明情報として遺産分割協議書を添付します(記載例の注6)。
- 預貯金の払い戻し・名義変更:金融機関によっては、協議書の提出や、独自の書式への署名を求められます。
- 相続人どうしの確認:誰が何を取得したかを後から確かめられるよう、書面に残しておくと安心です。
2. 全体の形(法務局の記載例)
法務局は「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」の記載例の中で、遺産分割協議書の例を公開しています。構成は次のとおりです。
- 表題「遺産分割協議書」
- 被相続人の死亡日・住所・氏名と、相続人全員が協議を行ったこと
- 誰が、どの財産を取得するか
- 協議書の通数と、各自が1通ずつ保有すること
- 作成日
- 相続人全員の住所・氏名と押印
- 「記」以下に、不動産の表示
以下の記載例は、この形をもとに、預貯金・代償分割・後日判明した財産の条項を加えたものです(住所・氏名・金額はすべて架空です)。実際には、協議の結果に応じて作成してください。
3. 冒頭:誰の相続で、誰が協議したか
- 日付は死亡日:記載例の注1では、遺産分割協議が成立した日ではなく、被相続人が死亡した日(戸籍上の死亡日)を書くとされています。
- 住所は最後の住所:住民票の除票などで確認します。登記記録上の住所と違う場合は、つながりを示す書類が別に必要になることがあります(記載例の注6)。
- 相続人は全員:戸籍で確定した相続人を全員書きます。相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったものとみなされるので(民法939条)、協議には加わりません。
4. 不動産の書き方
不動産は、登記記録(登記事項証明書)に記録されているとおりに正確に書きます(記載例の注12)。土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積です。住所(住居表示)と地番は違うことが多いので、固定資産税の通知書ではなく、登記事項証明書で確認しましょう。協議書の表示が登記記録と違うと、登記で使えないことがあります。
持分で共有にする場合は「相続 花子 持分2分の1、相続 一郎 持分2分の1」のように、誰がどれだけ取得するかを書きます。
5. 預貯金の書き方
預貯金は、どの口座かを特定できるように、金融機関名・支店名・預金の種類・口座番号を書きます。残高は日々変わるので、口座を特定して「その口座の預金(利息を含む)」とする書き方もあります。
金融機関によっては、協議書とは別に独自の書類を求められることがあります。手続きの前に、各金融機関に必要書類を確認しましょう。なお、遺産分割の前でも、各相続人は一定の範囲で預貯金の払い戻しを受けられます(民法909条の2)。
6. 代償分割の書き方
自宅のように分けにくい財産を1人が取得し、その代わりに他の相続人へお金を支払う分け方を「代償分割」と呼びます。協議書には、誰が・誰に・いくらを・いつまでに・どの方法で支払うかを具体的に書きます。分割払いにする場合は、回数と各回の期日・金額を書いておくと、後で行き違いが起きにくくなります。
代償金の額をいくらにするかは、相続人どうしの合意で決めます。相続税や、不動産の評価のしかたが関係する場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
7. 後日見つかった財産の条項
協議の後で、知らなかった預金や不動産が見つかることがあります。協議書にこの条項があれば、見つかった財産はその内容どおりに扱えます。条項がなければ、見つかった財産について、あらためて相続人全員で協議します(遺産の一部の分割も認められています。民法907条1項)。
「後日判明した遺産は、法定相続分に応じて取得する」「あらためて協議する」といった書き方もあります。誰か1人に取得させる書き方は、思いがけない高額の財産が見つかったときに他の相続人が納得しにくいこともあるので、全員で内容を確認してから決めましょう。
8. 署名・実印・印鑑証明書・通数・契印
- 署名と実印:記載例の注15では、遺産分割協議書には印鑑証明書と同じ印(実印)を押し、印鑑証明書を各1通添付するとされています。署名は自筆で行うのが確実です。
- 印鑑証明書の期限:相続登記では、印鑑証明書は作成後3か月以内のものでなくても差し支えないとされています(記載例の注6・注15)。金融機関の手続きでは、発行からの期間を指定されることがあります。
- 通数:記載例では「本協議書を3通作成して、それぞれに署名、押印し、各自1通を保有する」とし、相続人の人数分を作っています。
- 原本を返してもらうには:相続登記で「相続関係説明図」を出すと戸籍謄本などの原本を返してもらえますが、遺産分割協議書は別にその謄本(写し)を提出する必要があります(記載例の注6・注16)。
- 契印:記載例は、登記申請書が複数枚になるときは、つづり目に契印をするよう求めています(注14)。協議書が2枚以上になる場合も、差し替えを疑われないよう、全員の実印でつづり目に契印しておくと安心です。提出先によって扱いが違うことがあるので、事前に確認しましょう。
9. 作る前に確認したいこと
- 遺言がないか:遺言で分け方が指定されている場合は、それに従うのが原則です(民法902条・908条)。
- 相続人に未成年者がいないか:親と未成年の子がともに相続人の場合など、利益が相反するときは、子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります(民法826条)。
- 相続放棄をするか決めたか:相続財産を処分すると単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。放棄を考えている場合は、遺産分割の前に判断しましょう。放棄の期限は原則3か月です(相続放棄の期限3か月の数え方)。
- 相続分の目安:法定相続分を知っておくと、話し合いの出発点になります(法定相続分の一覧表と計算例)。
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遺産分割協議書は手書きでないといけませんか?
民法に書式の定めはなく、パソコンで作ってかまいません。法務局の記載例でも、相続人全員の住所・氏名と実印の押印、印鑑証明書の添付が求められています。署名は自筆で行うのが確実です。
協議書に書く日付は、話し合った日ですか?
冒頭の日付は、協議の日ではなく被相続人の死亡日(戸籍上の死亡日)を書きます(法務局記載例の注1)。末尾には協議書の作成日を書きます。
相続放棄をした人も協議書に署名しますか?
署名しません。相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったものとみなされるため(民法939条)、遺産分割協議の当事者になりません。
相続人に未成年の子がいる場合は、どうすればいいですか?
親と未成年の子がともに相続人の場合など、親と子の利益が相反するときは、子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります(民法826条)。
協議書を作る前に、葬儀費用のために預金を下ろせますか?
遺産分割の前でも、各相続人は口座ごとに「相続開始時の残高×1/3×法定相続分」まで、同じ金融機関から150万円を上限に、単独で払戻しを受けられます(民法909条の2、法務省)。払い戻した分は、その相続人が遺産の一部の分割で取得したものとみなされます。くわしくは亡くなった人の預貯金の払戻しで解説しています。
出典(一次情報)
- 法務局:不動産登記の申請書様式について(所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)の記載例)
- 法務局:所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)記載例(R8.10.5以降に申請する場合・PDF)
- 法務局:相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)
- 民法826条・902条・907条・908条・909条・909条の2・921条・939条(e-Gov法令検索)
いずれも2026年10月15日に確認しました。
関連する解説
- 相続放棄の期限3か月の数え方
- 死亡後の手続き一覧チェックリスト
- 法定相続分の一覧表と計算例
- 相続登記の義務化と3年の期限
- 相続の期限カレンダー亡くなった日から、手続きの期限日を一覧に
- 亡くなった人の預貯金の払戻し
- 相続で必要な戸籍の集め方
確認者:板野 克基(株式会社ブライトアセット 代表取締役) 最終更新日:2026年10月15日(条文はe-Gov法令検索で同日に確認) 編集方針と確認の手順